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丸吉優眠館 - 店長ブログ

“眠りの精をもとめて”を読んで

DSC_0012今週読んだ本です。執筆が1986年の為、現在急速な勢いで発展している睡眠科学の前段階の内容です。題名であるように“眠りの精”とは体内で分泌される睡眠物質の解明について書かれています。当時(1970年代)は睡眠が特異的な体内物質で調節されているという概念そのものが疑いの目で見られていました。そのような常識の中で批判を浴びながらも解明に尽力した科学者の先生方の思いには敬服します。1977年、スイスのモニエらが最初の本格的な睡眠物質“DSIP”を発表したことで世の中の常識がひっくり返され、睡眠物質は確かに存在し睡眠液性制御説が復権しました。(以前からこの説は提唱されていましたが、誰もその物質を証明し、化学的に単離、同定し合成できなかったのです。)日本でも1979年に第三回国際睡眠学会が開催されその場で著者の井上先生が“SPS”という睡眠誘発物質を発表しました。しかし、1982年、第6回ヨーロッパ睡眠学会でのSPS発表をモニエの後を継いで研究しているシェーネンベルガーがSPSにはDSIPが含まれているからこれは化学的に単離されたものではなくDSIPそのものだと強烈に反論を被りました。当時は睡眠物質を研究している科学者全員が、自身の睡眠物質だけが正しい物質でその他は違うと考えていました。ムラミルペプチドやプロスタグランジンD2など、多くの睡眠物質候補が研究されている中で、どの科学者も自身の正義に情熱をかけるので致し方ないのですが常識を打ち破るストレスは相当なものだったでしょう。さらに睡眠の実験で一番難しいのは、被験動物の生活をいかに無拘束状態にするかというストレスもあります。特に睡眠物質は脳内や体内で分泌されるものですからその抽出には外的なストレスが発生してしまいます。また注入の際には脳の各部位や腹腔に行うので、そのための装置を被験動物に装着し続けなければなりません。身体に実験器具を付けられてなるべく通常の生活を送らせるのも一苦労です。その為ある睡眠物質が同定されても、他で行う実験状態が異なるため結果が異なり、なかなか科学的な証明が難しかった背景もあります。そのような中で多くの睡眠物質が提唱されてきました。そしてついに1984年、睡眠物質だけに的を絞った国際会議が日本で開催され、著者の「睡眠物質は複数である、進化の途上にある、これらを統合する原理をさぐろうではないか」との会議冒頭の言葉で、各国の研究者たちが協力しあうことを考え始めたとのことです。

現在では多くの物質が睡眠物質として制定されていますが、睡眠科学が解明されたわけではありません。体内時計の制御、内分泌制御、体温のリズム、外的因子、自律神経制御、肉体的疲労など、多くのファクターが眠りを制御し、またコントロールしています。高度に発達した大脳を休める睡眠は脳の発達に連動して進化し、科学の解明の速さより速いかもしれません。


2014年10月03日



             
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